なでしこが泣いた夜

恥ずかしいけれど、今の私の心の思いを記しておこうと思う。お姉ちゃんが結婚するよ。今、こう書いただけで涙がポロポロでてきちゃう。私とお姉ちゃん。高校を卒業して9年間ずっと一緒に住んでくれたお姉ちゃん。お母さんのように私を育ててくれたお姉ちゃん。本当は一人暮らしをしたかっただろうにいつも私がお姉ちゃんにひっついてきたからお姉ちゃんの人生を邪魔したことも多かっただろうに。きっと婚期が遅れたこともね。でも私大好きなんだもん、お姉ちゃん。大学落ちたとき、行きたかった会社落ちたとき、私と一緒に泣いてくれたお姉ちゃん。私が高校生のとき、先に横須賀で一人暮らしをはじめたお姉ちゃんは、私を静岡においておくのが、かわいそうだと言ってくれ、早くお姉ちゃんと一緒に住もうね、お姉ちゃんが働いたらたくさんお洋服買ってあげるからね、って約束してくれた。私が働くようになってからも、いつもお姉ちゃんに甘えてきた。私が親にお金をだしてもらわずに自分で大学を卒業したこともあって、お姉ちゃんが親代わりとなって冬のボーナス
には毎年おこづかいをくれたお姉ちゃん。お姉ちゃんは怒ると恐いけど強くて優しかった。私とお姉ちゃんはいつも一緒だった。2DKのマンションで別々のお部屋だけど、隣どおしでお姉ちゃんがお家にいるだけで安心してうれしかった。「おやすみ〜お姉ちゃん」「おはよ〜お姉ちゃん」「おーい、バカ姉！」「なんだ、バカいも！」って毎日もう言えないの？ 私とお姉ちゃんの部屋をさえぎる壁をどちらからともなく、コンコンってたたいて気付いたら、コンコンってたたき返す二人だけの生きています、の合図。もうできないの？ 毎日つくる、お弁当も、もう当番さんがなくなっちゃうよ。私、毎日当番さんになっちゃうじゃん、お姉ちゃん。まずいよ、私のお弁当なんて。お姉ちゃんのおいしいお弁当が食べたいよ。寂しくて、寂しくて、お姉ちゃんに素直に「おめでとう」って言えなくてごめんね。「ヒロちゃんに一番おめでとうって言ってほしいや〜」ってお姉ちゃん。「近くに住んでね、あんまり遠くに行かないでね」ってお姉ちゃん。ごめんね、私は本当に甘え
ん坊で寂しがりやでお姉ちゃんがいないと生きていけないの。 お姉ちゃん、本当にお嫁になんか行かないで。 手前→妹弁当　奥→姉弁当　（姉作）